イベント出店の営業許可(臨時営業許可)の取り方【屋台・露店の手続きの流れ】
お祭りやマルシェで焼きそばや唐揚げ、ドリンクなどを販売したいとき、避けて通れないのが保健所の手続きです。「臨時営業許可を取ればいいと聞いたけれど、どこに、いつ、何を出せばいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
最初にお伝えしておきたいのは、イベントでの飲食出店のルールは、出店する地域(自治体・保健所)によって大きく異なるということです。許可が必要か届出で足りるか、扱える品目、申請期限、手数料、施設の基準は、それぞれの自治体が定めています。この記事では全体像と考え方を整理しますが、実際の手続きは必ず出店する地域を管轄する保健所に確認してください。
この記事は、厚生労働省と複数の自治体が公開している情報をもとに、2026年10月時点で一般的な考え方をまとめたものです。法令や各自治体の運用は変わることがあります。個別のケースについての判断は、管轄の保健所の案内に従ってください。
なぜイベント出店に許可が必要なのか
飲食店や食品の製造・販売を営業として行う場合、食品衛生法にもとづいて、業種に応じた営業許可または営業届出が必要です。これはイベントでの一時的な出店であっても基本的に同じで、多くの自治体が、祭りやイベントでテントなどの簡易な施設を設けて不特定多数の人に食品を提供する場合、原則として営業許可が必要としています。
たとえば東京都港区は、縁日や祭礼などの行事で不特定多数の者を対象に簡易な施設で食品を提供する場合、原則として営業許可が必要としたうえで、一定の要件をすべて満たす場合に届出での出店を認めています(港区:行事・催事で食品を提供される方へ)。
2021年の制度見直しのポイント
食品衛生法の改正により、2021年6月1日から営業許可制度が見直され、新たに営業届出制度がつくられました。あわせて、原則としてすべての食品等事業者に、一般衛生管理に加えてHACCPに沿った衛生管理が求められるようになっています(厚生労働省:食品衛生法の改正について)。
この見直しにともない、イベントでの臨時出店や露店の扱いも、各自治体があらためて要綱などで定めています。そのため、以前と同じ地域・同じメニューでも、手続きや条件が変わっている可能性があります。数年前の情報やほかの地域の体験談をそのまま当てはめず、最新の案内を確認しましょう。
「許可」と「届出」の違い
イベントでの食品提供の手続きは、大きく分けて「営業許可」と「届出」があります。どちらが必要になるかは、営業の目的・期間・扱う食品・主催者や出店者の立場などによって自治体が定めています。
| 区分 | 一般的なイメージ | 自治体の例 |
|---|---|---|
| 営業許可(臨時営業など) | 販売目的で、会場で調理・提供する事業者の出店 | 北九州市:簡易な施設で2週間以内に限り行う「臨時営業」の許可 |
| 営業許可(露店・仮設営業など) | 同じ設備で繰り返しイベントに出る事業者向けの、有効期間の長い許可 | 三重県:露店の許可は5年(更新可)。北九州市:「仮設営業」は5年間有効 |
| 届出 | 公共的な行事で短期間だけ出店する場合、無償提供、地域団体の模擬店など | 港区:公共的目的の行事で、出店期間が原則として年5日以下など。広島市:同じ場所での営業が年3日以内など |
ポイントは、「臨時」「露店」「仮設」「届出」などの名前や区分、その条件が自治体ごとに違うことです。同じ「臨時営業」という言葉でも、対象の期間や条件は自治体によって異なります。
自治体ごとのルールの例
違いをイメージしやすいように、公開されている自治体の案内から、いくつか例を紹介します。いずれも記事作成時点の各ページの記載をもとにしたもので、最新の内容は各ページで確認してください。
北九州市の例
- 臨時営業:自動車や組立式などの簡易な施設を使い、2週間以内に限り行う営業。許可の有効期間は出店期間のみ
- 仮設営業:簡易な施設で場所を変えながら繰り返し行う営業。許可の有効期間は5年間
- 申請は営業開始の1〜2週間前までに窓口で
- 扱える食品は原則として1施設につき1品目で、簡易な調理で提供直前に十分加熱するものなどに限られる
- 臨時営業の申請手数料は2,300円(記事作成時点の掲載)
三重県の例
- 会場で調理・販売する場合は、臨時または露店の営業許可が必要。必ず事前に、開催地を管轄する保健所に相談するよう案内
- 無償の提供や、学校・自治会の祭りで構成員が調理し関係者に限って提供する場合などは「イベント等食品提供届」
- 取扱品目は原則として1施設につき1品目。既製品や下処理済みの食材を提供直前に加熱するものなど
- テントは屋根と側面3方の囲いがあること、手洗い設備、ふた付きゴミ箱、食品衛生責任者の設置、HACCPに沿った衛生管理計画などの要件
- 手数料は露店10,000円、臨時2,500円(記事作成時点の掲載、三重県収入証紙で納付)
広島市の例
- イベントや祭りでの食品の提供には、販売期間や品目に応じて届出または営業許可が必要
- 同じ場所での営業が年3日以内で、調理や販売が定められた条件・品目に当てはまる場合は「臨時店舗の出店に伴う食品取扱届」
- 届出は開催日の10日前まで。条件に当てはまらない場合は営業許可を申請
東京都港区の例
- 縁日・祭礼などの行事で簡易な施設を設けて食品を提供する場合、原則として営業許可が必要
- 公共的目的のある行事であること、出店期間が原則として年5日以下であることなど、要件をすべて満たす場合は臨時出店者として届出で出店できる
このように、届出で足りる条件、扱える品目、申請期限、手数料は地域によってまったく違います。「前に出た地域ではこうだった」は通用しないと考えておきましょう。
臨時営業許可を取るまでの流れ
自治体によって細部は異なりますが、一般的な流れは次のとおりです。
- 出店が決まったら、主催者に保健所の手続きを確認する — 主催者が保健所に開催の届出や出店者一覧を提出し、出店者ごとの手続きをとりまとめるイベントもある
- 会場を管轄する保健所に事前相談する — 会場の所在地で管轄が決まる。出店者の住所ではない点に注意
- 扱う品目・調理工程を伝え、許可か届出か、扱えるかを確認する
- 必要書類をそろえる
- 期限までに申請し、手数料を納める
- 施設の確認を受ける — 当日の現地確認や、事前に設備を持ち込んでの確認など、方法は自治体による
- 許可証(指令書)を受け取り、当日は掲示などの指示に従う
申請のタイミング
申請期限は自治体によって異なり、「営業開始の1〜2週間前まで」「開催日の10日前まで」などと案内されています。出店が決まったらすぐに保健所に相談するくらいのつもりで動きましょう。メニューの変更が必要になることもあるため、早めの相談が安心です。
必要書類と手数料の考え方
よく求められる書類
自治体によって異なりますが、次のような書類を求められることが一般的です。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 営業許可申請書 | 自治体の様式。臨時・露店用の様式があることも |
| 施設の図面 | テントやキッチンカー内の設備配置。手書きで可とする自治体もある |
| 会場の見取り図・位置図 | 会場内のどこに出店するか |
| 食品衛生責任者の資格を証明するもの | 資格証の写しなど。詳しくは「飲食で出店するのに必要な資格」 |
| 水質検査の結果 | 水道水以外の水を使う場合など |
| 主催者の開催届・出店者一覧 | 主催者側が提出するケースも |
手数料の考え方
手数料も自治体ごとに定められていて、区分(臨時・露店・仮設など)や許可の期間によって大きく変わります。上で紹介した例だけでも、数千円の区分から1万円前後の区分までありました。また、同じ地域で年に何度も出店するなら、1回ごとの臨時営業許可より、有効期間の長い露店・仮設営業の許可のほうが合う場合もあります。
手数料の金額と納め方(現金、収入証紙、電子納付など)は、必ず管轄の保健所の最新の案内で確認してください。出店の収支を計算するときは、手数料も費用に含めておきましょう(「出店料の相場と売上・利益の目安の計算」)。
扱える品目と施設の基準
品目の制限
テントなどの簡易な施設では、衛生上のリスクを抑えるため、扱える品目や調理工程に制限が設けられていることが一般的です。公開されている例では、次のような考え方が見られます。
- 原則として1施設につき1品目
- 既製品や下処理済みの食材を、提供直前に十分加熱するもの
- 市販の飲料を注ぎ分けるもの
- 加熱しない食品、加熱後に具材を加えるもの、会場での食材のカットなどは不可とする例がある
北九州市の案内では、おにぎり、ちらし寿司、スムージー、生搾りジュースは提供不可とされ、自家製の氷の使用や営業場所での食材のカットも禁止とされています(北九州市)。メニューを決める前に、そのメニューが出店地域で扱えるかを保健所に確認するのが安全です。
施設の基準の例
- テントは屋根と側面(3方など)を囲う
- 手洗い設備と手指の消毒
- 必要な量の飲用に適した水
- ふた付きのゴミ箱
- 食品を保管する冷蔵設備(クーラーボックスなど)
- 使い捨ての食器
必要な設備は「イベント出店の持ち物チェックリスト」にも飲食出店向けの項目をまとめています。
仕込み場所にも注意
会場での調理を最小限にするため、事前に仕込みをする場合、仕込みをする場所が許可を受けた施設である必要があると案内している自治体があります(三重県の例では、下処理は原則として許可施設で行うとされています)。自宅の台所での仕込みが認められるとは限らないため、仕込みの方法も含めて相談しましょう。
キッチンカーの場合
キッチンカーは、車両を施設として営業許可を受けるのが一般的です。許可は原則として許可を受けた自治体の区域で有効なため、別の自治体の会場に出店するときは、その地域での営業が可能か、追加の手続きが必要かを確認する必要があります。詳しくは「キッチンカーの出店場所の見つけ方」で解説しています。
許可以外に確認したいこと
- 火気の使用 — ガスコンロや炭を使う場合、消防署への届出や消火器の設置を求められることがある(広島市の案内でも、火を使う露店での消火器の準備や消防局の案内の確認が呼びかけられています)
- 酒類の販売 — 酒類を販売する場合は、税務署への相談が必要(北九州市の案内でも言及されています)
- 会場のルール — 発電機の可否、ガスボンベの持ち込み、ゴミや排水の処理
- 保険 — 食中毒やけがに備えた賠償責任保険(「出店者の保険」)
よくある質問
主催者が「保健所の手続きはこちらでまとめます」と言っています
主催者が開催の届出や出店者一覧の提出を行い、保健所との調整を取りまとめるイベントはあります。ただし、出店者自身が申請や手数料の納付をしなければならないケースも多いため、「自分が何をする必要があるか」を主催者に具体的に確認しましょう。
無料で配るだけなら許可は不要ですか?
自治体によっては、無償の提供は許可ではなく届出の対象としている例があります(三重県の例など)。ただし、無償でも食中毒のリスクは同じで、届出が必要な場合があります。保健所に確認しましょう。
袋入りのお菓子や缶ジュースを売るだけなら?
未開封の常温保存品や市販の飲料をそのまま販売する場合は許可が不要とする例があります(北九州市の例など)。一方で、品目や保存方法によっては届出などが必要な場合もあるため、確認は欠かせません。
まとめ
イベントでの飲食出店には、原則として保健所の営業許可や届出が必要です。ただし、許可と届出の線引き、扱える品目、申請期限、書類、手数料は自治体ごとに異なります。出店が決まったら、まず主催者に手続きの分担を確認し、会場を管轄する保健所に早めに相談する。これが最も確実で、結果的に一番の近道です。
あわせて、食品衛生責任者の資格については「飲食で出店するのに必要な資格」、出店全体の流れは「イベント出店の始め方」をご覧ください。出店者向けの基本は出店者ガイドにもまとめています。
参考にした公的情報
- 厚生労働省:食品衛生法の改正について
- 北九州市:臨時・仮設営業許可申請の手続き
- 三重県:イベントで飲食物を提供したい
- 広島市:臨時店舗での営業、地域活動等での食品の提供
- 港区:行事・催事で食品を提供される方へ
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