出店規約の作り方【入れるべき条項と文例】
「キャンセルしたら出店料は返ってくるの?」「隣のブースと音量でもめた」「雨で中止になったのに返金がない」。出店者とのトラブルの多くは、事前に約束していなかったことから起こります。その約束を文章にしたものが出店規約です。
出店規約というと難しく聞こえますが、地域のお祭りやマルシェで必要なのは、法律の専門書のような文書ではありません。出店者が応募前に読んで「この条件なら出店する」と判断でき、困ったときに主催者と出店者が同じ文章を見て話し合えることが大切です。この記事では、出店規約に入れるべき条項を一つずつ取り上げ、そのまま書き換えて使える文例とあわせて解説します。
すぐにひな形がほしい方は、項目を選ぶだけで出店規約の下書きを作れる「出店規約テンプレート作成ツール」もご利用ください。
出店規約と募集要項の違い
まず、募集要項と出店規約の役割を分けて考えると、書く内容を整理しやすくなります。
| 募集要項 | 出店規約 | |
|---|---|---|
| 目的 | 出店したい人に「どんなイベントか」「どんな条件か」を伝える | 出店する人と主催者の「約束ごと」を決める |
| 主な内容 | 日時・会場・募集数・出店料・応募方法・締切 | 支払い・キャンセル・禁止事項・責任・中止時の扱い |
| 読むタイミング | 応募を検討するとき | 応募・出店確定のとき、トラブルが起きたとき |
| 変更の頻度 | 毎回変わる | 基本は毎回同じ。必要に応じて改定 |
募集要項は毎回作り直しますが、出店規約は一度しっかり作れば次回以降も使い回せるのが特徴です。初回に少し時間をかけて作っておくと、2回目以降の準備がぐっと楽になります。募集要項の書き方は「出店者募集の方法と集め方」で詳しく紹介しています。
出店規約を作る手順
1. 過去のトラブルと心配ごとを書き出す
実行委員会のメンバーで、「過去に困ったこと」「起きたら困ること」を付箋やメモに書き出します。初回開催なら、他のイベントに出店している知り合いに「出店者として困ったこと」を聞くのも有効です。
- 直前のキャンセルや無断欠席
- 出店料の未払い、支払い遅れ
- 申込内容と違う商品の販売
- 区画からのはみ出し、通路への荷物の置きっぱなし
- 音・におい・煙をめぐる隣のブースとのトラブル
- ゴミの放置、火気の扱い
- 雨天中止時の出店料の扱い
2. 条項に振り分ける
書き出した項目を、後述の15の条項に振り分けます。どこにも入らない項目があれば、「その他の遵守事項」にまとめます。
3. 文例をもとに自分たちの言葉で書く
文例をそのまま使うのではなく、自分たちのイベントで実際に運用できる内容かを確認しながら書き換えます。「◯日前までのキャンセルは返金」と書いたら、その日付を管理し、返金の手続きまで実際に行えるかを考えます。
4. 実行委員会で読み合わせる
書いた規約を、会計担当や会場担当など複数人で読み合わせます。「この場合はどうなる?」と具体的な場面を当てはめると、抜けている点が見つかります。
5. 応募前に読めるところに公開し、同意をもらう
規約は、応募フォームや募集ページから応募前に全文を読める状態にしておきます。応募フォームに「出店規約に同意します」のチェック欄を設け、同意した記録が残るようにしましょう。応募フォームの項目は「出店者募集をGoogleフォームで行う方法」や「応募フォームテンプレート」も参考になります。
出店規約に入れるべき15の条項
| No. | 条項 | 主な内容 | 重要度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 目的・適用範囲 | 規約が誰に、何に適用されるか | 必須 |
| 2 | 出店の申込と確定 | 申込方法、審査、確定のタイミング | 必須 |
| 3 | 出店料と支払い | 金額、支払方法、期限、領収書 | 必須 |
| 4 | キャンセル | 出店者都合のキャンセルと返金 | 必須 |
| 5 | 中止・延期 | 雨天・荒天・災害時の扱い | 必須 |
| 6 | 区画と設備 | 区画の割当、はみ出し禁止、電源 | 必須 |
| 7 | 搬入・搬出 | 時間、車両、駐車 | 必須 |
| 8 | 販売品目 | 申込品目以外の販売禁止 | 必須 |
| 9 | 許可・届出 | 食品・火気などの手続き | 食品・火気がある場合は必須 |
| 10 | 禁止事項 | 迷惑行為、危険物、勧誘など | 必須 |
| 11 | 衛生・安全・ゴミ | 火気、消火器、ゴミの持ち帰り | 必須 |
| 12 | 事故・損害の責任 | 出店者の責任範囲、保険 | 必須 |
| 13 | 写真・情報の利用 | 広報での写真・店名の利用 | 推奨 |
| 14 | 個人情報の取扱い | 利用目的、第三者提供 | 必須 |
| 15 | 出店の取消し・規約の変更 | 違反時の対応、改定 | 必須 |
以下、条項ごとにポイントと文例を紹介します。文例の「◯」は自分たちのイベントに合わせて書き換えてください。
第1条 目的・適用範囲
誰と誰の約束なのかをはっきりさせます。主催者名は、実行委員会・町内会・商店街振興組合など、実際に出店料を受け取り、責任を持つ団体名を書きます。
第1条(目的)
本規約は、◯◯実行委員会(以下「主催者」)が開催する「◯◯まつり 20XX」(以下「本イベント」)に出店する個人・団体(以下「出店者」)と主催者との間の約束ごとを定めるものです。出店者は、本規約に同意のうえ出店を申し込むものとします。
第2条 出店の申込と確定
「応募した時点で出店が決まった」と誤解されないよう、どの時点で出店が確定するかを書きます。
第2条(申込と出店の確定)\
- 出店の申込は、主催者が指定する応募フォームから行うものとします。\
- 主催者は、申込内容をもとに選考を行い、結果をメールで通知します。選考の理由についてはお答えできない場合があります。\
- 出店は、主催者が指定する書類の提出と出店料の支払いが確認できた時点で確定します。
選考の方法や結果の伝え方は「出店者の審査基準と選考方法」、応募多数のときの抽選は「出店者の抽選方法」で解説しています。
第3条 出店料と支払い
金額だけでなく、期限と、期限を過ぎた場合の扱いまで書くのがポイントです。
第3条(出店料)\
- 出店料は、募集要項に定める金額とします。\
- 出店者は、出店確定の通知に記載された期限(原則として通知から◯日以内)までに、主催者が指定する方法で出店料を支払うものとします。振込手数料は出店者の負担とします。\
- 期限までに支払いが確認できない場合、主催者は出店の確定を取り消すことがあります。
集金方法ごとの向き・不向きや未払いへの対応は「出店料の集金方法」を参照してください。
第4条 キャンセル
もっともトラブルになりやすい条項です。いつまでなら、いくら返金するかを具体的な日付や日数で書きます。
第4条(出店者都合のキャンセル)\
- 出店者の都合で出店を取りやめる場合は、速やかに主催者へメールで連絡するものとします。\
- 出店料の返金は次のとおりとします。
・開催日の◯日前まで:出店料の全額(振込手数料を差し引いた額)
・開催日の◯日前から◯日前まで:出店料の◯割
・それ以降および無断欠席:返金なし\- 無断で欠席した場合、次回以降の出店をお断りすることがあります。
キャンセル料の割合や期限の決め方は「出店キャンセル規定とキャンセル料の決め方」で詳しく解説しています。キャンセル料は、主催者が実際に負う費用(区画の空き、備品の手配など)に見合う、説明できる金額にしておくことが大切です。
第5条 中止・延期
雨天・荒天、災害、感染症の流行など、主催者の判断で中止・延期する場合の扱いです。判断の時刻と連絡方法、出店料の扱いを書きます。
第5条(中止・延期)\
- 天候、災害、その他やむを得ない事情により、主催者の判断で本イベントを中止・延期・時間短縮することがあります。\
- 開催の可否は、原則として開催前日の◯時までに判断し、メールで出店者に連絡します。\
- 主催者の判断で中止した場合の出店料は、◯◯とします(例:全額返金/準備費用を差し引いて返金/次回出店料に充当)。\
- 中止・延期により出店者に生じた仕入れ費用等の損害について、主催者は補償しないものとします。
「中止時は返金しない」とする場合は、その理由(会場費・設営費などが中止でも発生するため)を募集要項で説明しておくと、出店者の納得を得やすくなります。
第6条 区画と設備
第6条(区画)\
- 出店区画は主催者が決定し、出店者は区画の変更を求めることはできません。\
- 出店者は、割り当てられた区画の範囲内で営業し、通路に商品・看板・荷物を置かないものとします。\
- 電源・水道等の設備は、事前に申し込んだ出店者のみ、申し込んだ容量の範囲で使用できます。
区画の大きさや配置の考え方は「出店の区画割りとブース配置図の作り方」で紹介しています。
第7条 搬入・搬出
第7条(搬入・搬出)\
- 搬入は◯時◯分から◯時◯分まで、搬出は営業終了後◯時◯分までに行うものとします。\
- 会場内への車両の乗り入れは、搬入・搬出時間内に限り、主催者の誘導に従うものとします。\
- 営業時間中の撤収(早じまい)は、主催者の許可を得た場合を除きできません。
第8条 販売品目
第8条(販売品目)\
- 出店者は、申込時に届け出た品目のみを販売・提供するものとします。品目を変更・追加する場合は、事前に主催者の承認を得るものとします。\
- 主催者は、本イベントの趣旨にそぐわない品目、または他の出店者と著しく重複する品目の販売を制限することがあります。
第9条 許可・届出
食品を扱う出店者には、保健所の営業許可や届出が必要になる場合があります。2021年6月に施行された改正食品衛生法で営業許可・届出の制度が見直されており(厚生労働省「営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報」)、臨時営業の扱いや調理できる品目の範囲は自治体によって異なります。規約には「出店者の責任で手続きする」ことと、「主催者に書類の写しを提出する」ことを書いておき、具体的な内容は管轄の保健所に確認してもらいましょう。
第9条(許可・届出)\
- 食品の販売・提供、火気の使用など、法令や条例で許可・届出が必要な行為を行う出店者は、出店者の責任で必要な手続きを行うものとします。\
- 出店者は、主催者が求める許可証・届出書の写し等を、指定の期限までに提出するものとします。
イベント全体で必要な手続きは「イベントの許可申請・届出まとめ」で整理しています。
第10条 禁止事項
第10条(禁止事項)
出店者は、次の行為をしてはなりません。
・法令や公序良俗に反する商品の販売、他人の権利(著作権・商標権など)を侵害する商品の販売
・区画外での呼び込み、来場者のつきまとい、宗教・政治・ネットワークビジネス等の勧誘
・主催者の許可のない大音量の音楽・拡声器の使用
・危険物の持ち込み、主催者の許可のない火気の使用
・出店権の第三者への譲渡・転貸、他の出店者との区画の交換
・その他、主催者が本イベントの運営に支障があると判断する行為
あわせて、暴力団など反社会的勢力の排除条項を入れておくのが一般的です。各都道府県の暴力団排除条例を踏まえ、「反社会的勢力に該当しないことを表明し、該当した場合は出店を取り消す」旨を記載します。
第11条 衛生・安全・ゴミ
火気を使う露店には、消火器の準備や消防署への届出が条例で求められる地域があります(例:東京消防庁「露店等の開設届出」等の案内)。基準は地域ごとに違うため、管轄の消防署に確認したうえで規約に反映させます。
第11条(安全・衛生・ゴミ)\
- 火気を使用する出店者は、消火器を用意し、すぐに使える場所に置くものとします。\
- 出店者は、テント等の設営にあたり、強風に備えて重り等で固定するものとします。\
- 出店で生じたゴミは、出店者がすべて持ち帰るものとします(主催者が指定するゴミを除く)。
第12条 事故・損害の責任
第12条(責任)\
- 出店者は、自らの商品・設備・行為により来場者や第三者に損害を与えた場合、自らの責任と負担で解決するものとします。\
- 盗難・紛失・天災による出店者の商品・備品の損害について、主催者は責任を負いません。ただし、主催者の故意または重大な過失による場合はこの限りではありません。\
- 主催者は、出店者に対し、賠償責任保険への加入を求めることがあります。
「主催者は一切責任を負わない」と書きたくなりますが、主催者に故意・重大な過失がある場合まで免責するような書き方は、規約の有効性が争われる原因になりえます。保険については「イベント主催者が入るべき保険」も参考にしてください。
第13条 写真・情報の利用
第13条(広報での利用)
主催者は、本イベントの広報のため、出店者の店名・販売品目・SNSアカウント、および会場で撮影した写真・動画を、公式ページ・SNS・チラシ等に掲載することがあります。掲載を希望しない場合は、申込時にお知らせください。
第14条 個人情報の取扱い
応募フォームで集める氏名・連絡先は個人情報です。個人情報保護法では、個人情報を取得する際に利用目的を通知・公表することなどが定められています(個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。規約には、何のために使い、誰に渡すのかを書きます。
第14条(個人情報)\
- 主催者は、出店者から取得した個人情報を、出店の選考、出店に関する連絡、本イベントの運営、次回以降のイベントのご案内のために利用します。\
- 主催者は、法令に基づく場合や、保健所・消防署・警察署等への届出に必要な場合を除き、本人の同意なく個人情報を第三者に提供しません。
第15条 出店の取消し・規約の変更
第15条(出店の取消し・規約の変更)\
- 出店者が本規約に違反した場合、または申込内容に虚偽があった場合、主催者は出店の確定を取り消し、または営業の中止を求めることがあります。この場合、出店料は返金しません。\
- 主催者は、必要に応じて本規約を変更することがあります。変更した場合は、出店者にメール等で通知します。
書くときの注意点
運用できないことは書かない
「無断欠席は次回以降出店禁止」と書いても、出店者の記録を残していなければ実行できません。規約に書いたことは守らせる仕組みとセットで考えます。出店者の記録の残し方は「出店者管理の方法」で紹介しています。
主催者だけに都合のよい規約にしない
「主催者はいつでも理由なく出店を取り消せる、出店料は返金しない」のように一方的な規約は、出店者に敬遠され、応募が減る原因になります。出店者は複数のイベントの規約を見比べています。出店者にとっての約束(中止時の扱い、連絡の期限など)も書くと、信頼されるイベントになります。
曖昧な言葉を避ける
| 曖昧な書き方 | 具体的な書き方 |
|---|---|
| 直前のキャンセルは返金しません | 開催日の7日前以降のキャンセルは返金しません |
| 早めにお支払いください | 出店確定通知から10日以内にお支払いください |
| 大きな音は控えてください | 拡声器・スピーカーの使用は主催者の許可を得た場合に限ります |
| ゴミは適切に処理してください | 出店で出たゴミはすべてお持ち帰りください |
金額や日付は募集要項と一致させる
規約と募集要項で出店料やキャンセル期限が食い違うと、どちらが正しいのかで揉めます。毎回変わる数字は募集要項に書き、規約では「募集要項に定める金額」と参照する形にすると、食い違いを防げます。
不安な点は専門家に確認する
出店規約は契約の一部になります。高額な出店料を扱う、大規模なイベントである、過去に深刻なトラブルがあった、といった場合は、弁護士など専門家に確認してもらうと安心です。
公開前のチェックリスト
- 主催者名(責任を持つ団体名)が正しく書かれている
- 出店料の支払期限と、期限を過ぎた場合の扱いが書かれている
- キャンセル時の返金ルールが日付・日数で書かれている
- 雨天・荒天時の判断時刻、連絡方法、出店料の扱いが書かれている
- 食品・火気の許可・届出を出店者の責任で行うことが書かれている
- 禁止事項と、違反時の対応が書かれている
- 個人情報の利用目的が書かれている
- 募集要項と金額・日付が一致している
- 応募フォームに「規約に同意する」チェック欄がある
- 実行委員会の複数人で読み合わせた
出店規約を守ってもらうための運用
規約は作って公開するだけでは十分ではありません。出店者に必要なタイミングで思い出してもらうことが大切です。
- 応募時 — 規約への同意を必須にする
- 出店確定時 — 確定の連絡に、支払期限とキャンセル規定を改めて記載する
- 開催前 — 搬入時間・禁止事項・ゴミの扱いを最終案内で再度伝える
- 当日 — 受付で出店者向けの注意事項を紙で渡す
イベイロで出店規約を運用する
イベイロの出店者募集では、募集ページに出店規約や注意事項を載せ、応募フォームから申し込んでもらえます。出店確定までの流れは「応募受付→審査中→仮承認→書類確認中→出店確定」のステータスで管理でき、営業許可証などの書類の回収と、不備があった場合の差し戻しも同じ画面で行えます。開催前には、出店確定の出店者へ当日の案内を自動で送るリマインドも設定できます。現在は先行公開中のため、すべての機能を無料で使えます。規約のひな形づくりには出店規約テンプレート作成ツールを、募集の運用には無料登録をご活用ください。
よくある質問
Q. 出店規約は必ず作らなければいけませんか?
法律で作成が義務づけられているわけではありません。ただ、出店料の返金や中止時の扱いなどは、事前の約束がないとトラブルになりやすいため、小規模なイベントでも簡単な規約を用意しておくことをおすすめします。
Q. 他のイベントの出店規約をそのまま使ってもいいですか?
文章をそのまま転用するのは避け、自分たちのイベントで実際に運用できる内容か確認しながら書き直しましょう。会場の条件や出店料の扱いはイベントごとに違うため、他のイベントの規約は「どんな条項があるか」の参考にとどめるのが安全です。
Q. 規約への同意はどうやって取ればいいですか?
応募フォームに「出店規約を読み、同意します」というチェック欄を設け、チェックしないと送信できないようにするのが一般的です。規約の全文は応募前に読めるようリンクを置いておきます。
Q. 開催直前に規約を変更してもいいですか?
出店者が同意した内容を後から不利に変えると、トラブルの原因になります。変更が必要な場合は、理由を添えて出店者全員に連絡し、特に返金など金額に関わる変更は慎重に行いましょう。次回開催から適用する形にするのが無難です。
Q. 出店者が規約に違反した場合はどうすればいいですか?
まずは規約の該当箇所を示して改善をお願いし、従ってもらえない場合に営業の中止や次回の出店お断りを検討します。当日のやり取りや注意した内容を記録に残しておくと、後から説明しやすくなります。